「いやいやいや、ちょっと待って!なんでででで!?」
 
「だって蛍先輩、やっとくって言って忘れてること結構あるじゃないですか。そのあと私がそれ肩代わりするんですよ!?」
 

心当たりがあるのか沈黙する蛍。

うっかりやるのを忘れてたのは、たいてい木村くんが可愛い行動をして、きゅんきゅんしながら眺めている時なのだ。

そう、うっかり。

うっかり木村くんを見つめていたら、やるべき時間を過ぎているのだ。
 

「私は、あんまり心当たりがないんだけどな~」
 

不思議そうに、あるいは少し困った様子でいつもののんびり口調で言う迷。

 
「迷先輩は、ぼんやりし過ぎてて何を考えてるのか分かりづらいんですよ!怒ってても悲しくても楽しくてもずっとぼんやり同じ調子で分かりづらいんです!!」
 
「ええ~、それ、私のせいじゃな……」

 
否定しようとした迷の言葉を遮り、弟子ふたりは涙ぐみながら手を取り合った。
 

「大変ですね、お互いに」
 
「本当ですね、頑張りましょう、一緒に」
 

背景には何かキラキラしたものが浮かび、蚊帳の外にいる魔女ふたりは沈黙。

灰になって崩れ落ちそうな雰囲気を醸し出しながら、ポツリと言った。
 

「「がんばろー」」

 
それはそれは弱々しい声であった。