「風谷、宿題見せろよ。」
「は?やなんだけど…。」
僕は第一希望であった私立春ヶ崎高校に合格を果たし、入学してから約一年が経った。
そして今、中学から仲の良い辻浦日向に次の英語の宿題を見せるよう迫られていた。
今回の宿題は案外面倒だったのでそう簡単には見せるまいと思い、僕は中庭まで逃げてきた。
そういえば、この学校には僕らの出身中学である三木中の先輩が進学しているはずだ。
その先輩にはまだ一度も会っていない。
入学してから一年も経てば、一回は会ってもおかしくはない。
というか、一年も経って会わない方がおかしいのかもしれない。
そうなると、この高校への進学はしていないのかもしれない。
先輩とはメールをしていたが先輩が高校進学をしてから連絡は途絶えてしまって、今はお互いが会うこともなくなった。
教室に戻り、日向を見つけると僕は聞いた。
「なぁ、日向。」
「ん?」
「水上先輩って春ヶ崎だよな?」
「さぁな、俺は知らない。そんなに知りたいなら
二年の教室行けよ。」
そう言って、僕の机から宿題専用ノートを取り出して
これ借りるな。と言って自分の席へ戻ってしまった。