静けさが戻った病室。

息を切らした僕と、困ったように笑う君。


「なに、やってんだよ。」


「うん。ごめんね。」


「君が伝えたかった事、レンゲソウの花言葉、あなたと一緒なら苦痛が和らぐ、でしょ。」


「ばれちゃった。調べなくてよかったのに。」


辛そうに、おどけて笑う彼女に目頭が熱くなっていく。


「きついなら、辛いなら、僕を頼れば良いんだよ。自分をいじめてちゃダメだよ。」


「うん、うん」

淡々と言葉を紡ぐ僕。

彼女の目から涙が伝ってベットに落ちて行く。


言うしかない。

「好きだよ。僕といたら苦しいことが和らぐんだったら、側にいるべきだよ。だから、付き合ってください。」


覚悟を決めて勇気を出して言った言葉だった。


「うん。よろしくお願いします。」


泣きながら微笑む彼女がいた。


「春樹、こっちきて。」


彼女の元へ行き手を握る。

冷たくて細い手だった。


「退院したら、また花摘み行こうな」


「植物園にも行きたいな」


「いいね、いこう。舞の行きたいとこ、いっぱい連れて行ってあげるから、早く元気になれよ。」


彼女の心を休めてあげるには、花が一番だと思った。

毎日、レンゲソウも眺めながら泣いていた彼女は、僕の存在を待っていたのかもしれない、とそんな照れくさいことを思った。


「あ、そういえば。レンゲソウの花言葉って、よく調べたら私の幸福って意味もあるんだよ。」


「ふふっ。花言葉博士だ。」


「幸せになろうな」


「うん」


二人で泣きながら笑いあった。