「へえ、そんなに白くなりたいんだ」
「誰っ!」

勢いよく声が聞こえた方向に首を振るとそこには、逆光のせいで顔は見えないが、髪の長い女がいる。

それに、その女は不思議なことに窓の外にいた。その上、ここが2階ということが彼女をより驚かせているのだろうと容易に推測できた。




つまり、その女は浮いている。




「誰なのっ!」

しかし、そのあまりにも不思議な光景を前にして、雫は強気の姿勢で行くことに決めたようだ。
まだ顔には恐怖が残っているが、さすがは学校の女王様というべきだろう。

しかし、

「ねえ、貴女は願いのためならば自分の魂を売れる?私なら叶えてあげられるよ。
そうだね、体の色素を取り除いたらどう?そうすれば肌は真っ白。貴女の恨む紅愛菜よりもずっと白くなれるよ」

はあ?と困惑した表情を見せる。
どうやらこれで先程までの驚きや恐れ、更には強気の姿勢まで吹き飛んで行ったようだ。
. . . .
それもそうだろう。魂を売るなんてまるで悪魔のようなことを言っているのだから。誰だって困惑する。
人によっては「頭大丈夫?」と本気で心配する人もいるのだが。

閑話休題。

しかし、「紅愛菜よりも」というワードに過剰反応した雫はこう答えた。

「当然、元の白さを取り戻せるなら…紅愛菜よりも白くなれるならば魂でも何でも差し上げるわよ」
「言ったね?じゃあ、取引成立。明日の朝には色素がなくなって真っ白になってるはずだよ。
ばいばい」

. . . .
そう言って私は雫サマの前から姿を消した。

思わずにやけてしまいそうになる口を必死に隠しながら。