「なにか、あった?」
抱きしめられたままのヒナタがそっと呟く

「いや、なにも」

精一杯の強がりだ
お願いだから
忘れさせて
なにも言わないで…

ヒナタはそっと腕を俺の背中に回した

「アオイ…私の前では無理しないで」

優しい
けど今は思い出したくない
現実は嫌だ

「お姉さんに、なにか、あった…??」







無理だ
泣けてきた



「…姉ちゃんは癌だってさ。もう、もたないらしい」



「…」









ヒナタはどうしたら良いのかと迷って
そして俺の抱きしめる手から逃れた