「ちょっといいかな」

授業が終わり教室へ帰る途中
担任だという先生に呼び止められた
先生は当たり前のように職員室に入り俺も当たり前のようについて行った

「はい」

俺はただ返事をしてついていく

「今日、一時限目来なかったろ」

「はい」

こんなことで呼び止める先生だったか?
いつも適当にしていたじゃないか

続いて出てくるのはきっと「大丈夫か」と心配の声をかけられるんだろう
両親がいなくて唯一の姉ちゃんも事故にあったからっていう同情の言葉



「お姉さんが事故にあって忙しいと思う。お金の面でも大変だろう、入学したてなのにこんなことになってしまって学校生活になじむ気にならないのかもしれない」



なんだよ、それ
そうやって気づかったふりして
結局は理解しようとか手を貸そうとか思わないんだろう
大人っていっつもそうだ

『これからどうするのかしら』
『可哀想にねぇ』

いつも遠巻きに ”見るだけ”
声をかけて「だいじょうぶ?」って心配している自分に酔って
自分はこうならなくてよかったと安堵し
俺を見下して優越感に浸っているんだ


「でもな、先生だってお前のことをちゃんと見てどうにかしようとしてるんだ」


どうにかってなんだよ
姉ちゃん助けてくれるのかよ
なんにもできないくせに

「だからお前も・・・」

「先生、僕体調が悪いので早退します」

先生の続きの言葉が聞きたくなくて俺は職員室を飛び出した