スマホを再び手にとって、
通信アプリを立ち上げるとさっき届いたメッセージを眺める。

“倫子(リンコ)ちゃんは彼氏いるの?”

返事をできずにいるメッセージ。

くれた相手は高校時代ずっと好きだった直(スナオ)くん。


倫子か……。

私の名前はおばあちゃんがつけてくれた。
倫理からきている。

つまり、
人としての道を守る人間になってほしいということらしい。


よく名は体をあらわすって言うけれど、
確かに私は倫理に基づいた人生を送ってきたほうだと思う。

だけど、最近それを揺るがすことに出くわした。


きっかけはその通信アプリで直くんの連絡先が仲間入りしたこと。

“もしかして倫子ちゃん?”

直くんがメッセージをくれた。

直くんは高校生の頃はサッカー部の主将をしていて、生徒会長、成績優秀。
もちろん、イケメン。

こんな完璧な王子様にはファンクラブまであって。


彼女もいたんだ。
それもほとんど切れ目なく。

時々彼女がいない時期があったけれど、
その時には告白する女子が殺到。

私は指をくわえて見てるだけだった。

うん、それにタイミング悪くって、
直くんに彼女いない時に限って彼氏いたしね。


まぁもっとも、本当に王子様って人だったから、
仲のいい男友だちっていう存在でいてくれるのがすっごい嬉しかったっていうか。

ほら女子ってさ、すぐ格付けすんじゃん?

彼氏もそこそこだったし、
それで男友だちもめっちゃイケメンってマジやばくね?
みたいなノリだよねー。

アッハー。

うん、とまぁ、そんな感じ。
お気楽極楽な私の人生。