直くんに注文はおまかせした。

うん、きっと自信だけはムダにあるんだろうから、
こうやって色んな女の人つれてきてんだろうな。

めちゃめちゃ注文慣れてたし。


あーもうマジで私のバカー!

想い出は想い出のままでいるべきだった……。


直くんのマシンガントーク、
適当に聞き流しながら過ごすこと十五分。

そろそろ牛さんやってくるかな~。
ワクワク。

うん、これだけが今の私の支えだわ。


「ちょっとあんた」

ん?

背後で声がする。

振り返ると同世代と思しき女性が般若みたいな顔して立ってる。
目の前の直くんをにらんでるみたい。

で、当の直くんはガクガクブルブルしてる。

へ?
どういうことだ?


「ミ、ミチヨ!」

直くんの声が震えてるんだけど。

え、これってまさかの修羅場?

そのミチヨって呼ばれた女の人が
私を品定めするように見下ろしてくる。

カンジわるっ!


「誰よ、この女」

いやいやいや、あんたこそ。
名を名乗れ!

ケンカ上等。
売られたケンカは買ってやんよ!

つうことでにらみ返す。


「人の夫に手ぇ出すんじゃないわよ!」

は?
イミわからんわ!

へ?

直くんを見ると青ざめてるし。
え、直くんまさかの既婚者かよ!