「……あやの、隣に座れ」
「……うん」
もう一脚あったイスをリョウの隣に置いて、腰を下ろす。
「……お母さん、意識戻ってほしいね」
先生と看護師さんの口ぶりから察して、お母さんは長くはないのだろう。
それならせめて、少しでもいいから意識が戻って欲しい。
お母さんが話せなくても、リョウが話しかけることは出来るから。
お母さんに伝えたいこと、沢山あるはずだもん。
私だって、お母さんに伝えたいことが沢山ある。
私に逢いたいと言ってくれたお母さんに、感謝の言葉を伝えたい。
リョウに後押ししてくれたお陰で今の私達がある。これからの私達がある。
全部全部、お母さんのおかげ。
だから、このまま逝かないでほしい。
私達の言葉を、聞いてほしい。
そう強く願った時、
「っ、リョウ、お母さんが……!」
お母さんの目が少し動いた気がした。
すぐさま、俯いてお母さんの手を握っていたリョウを軽く揺さぶって知らせる。
「母さん……!!」