「っ、ふっ……ぅ……」
涙を堪えることなんて出来なかった。
繋いでいるリョウの手もさっきより震えていて、それを何とか抑えようと強く握ってくる。
痛みなんて感じなかった。
感じるのは哀しみだけで。
泣き出したいほどの哀しみが、手を伝って流れ込んでくる。
「……っ、リョウ、お母さんの所へ行こう」
いつまでここに突っ立っている訳にはいかないから、リョウの手を引いて歩き出す。
「母さん……」
リョウは私から手を離し、お母さんの傍へ近寄っていった。
けど、お母さんの目は開いていなくて。
きっと私達がここに来たことにも気付いていない。
「……先生、母は今……」
「さっきまで意識があったのですが……」
「……もう、意識は戻らないんですか?」
「それは何とも言えません。ですが、危険な状態です」
「そう、ですか……」
そう返事したリョウは、お母さんの手を取って傍にあったイスに腰を下ろした。
それを見届けた先生と看護師さんは私に軽く頭を下げ、「何かあればすぐに呼んでください」と言って病室から出ていった。