「リョウ、もう着くから」

「……あぁ」



病院へ行くまでの道中、リョウは震えていた。


時間にすれば10分もかからないはずなのに、まるで何十分も走っているように感じて。


他人の私がこんなにもヤキモキしているのだから、家族であるリョウは落ち着かなくて仕方ないだろう。



「着きました」


「ありがとうございます!───リョウ、行こう」



握っていたリョウの手を引き寄せて、先に車から降りる。

運転手さんにもう一度お礼を言ってから早歩きで病院内に入り、そこからはリョウに手を引いて貰って病室へと向かった。



歩いている時もエレベーターに乗っている時も私達の震えは止まることはなくて。

病室に近付いていくほど心臓が主張してきて息苦しくなる。


互いに痛いほど手を握り合い、平静を保とうとしているけれど、それでも一向に震えは止まらなくて。


その震えが一際大きくなったのは、



「っ、リョウ……」



リョウがある病室のドアの前で立ち止まった時だった。