「───何してる。早く行け」



リョウと目が合うなりそう発したのは、間違いなくリョウのお父さんで。

後ろにはこの前お父さんの傍に居た、護衛らしき男の人もいた。



っていうか、なんで手を振っているんだろう……


後ろの人と目が合ったと思ったら何故か親しげに手を振られて、思わずリョウにしがみついて隠れてしまった私。


その流れでリョウを見上げれば。



「リョウ……?」



一瞬だけ。

本当に一瞬だけ顔を逸らして目を閉じたリョウ。


その横顔が目に焼き付いて離れなくて。



「あ、あの……!」



気づいた時にはお父さんに話しかけていた。




「え、っと……」


私なんかが話しかけてもいい人じゃないって事ぐらい分かってる。

けど、どうしても言いたかった。



「あの、私がこんなお願いをするのは厚かましいのですが……。その……リョウのお父さんも一緒にお母さんの所へ行って頂けませんか?」




リョウのお父さんが今ここにいるって事は、お母さんの元へは行かないって事だろう。


お父さんがここにいる時点でリョウもそれに気が付いているはず。


じゃなかったら、あんなにも哀しそうな───寂しそうな顔なんてしない。