「やめろ……!!」
すぐさまリョウの怒号が飛んでくる。
けれど、男達の力が緩むことはなく、逆に力を込められ、苦痛で顔が歪んだ。
リナさんよりリョウの方が立場が上だとしても、彼らにとっての主人はリナさんだけで、リナさんの言葉以外従う気はないのだろう。
「───っ、リョウ!私は大丈夫だからサインしないで!
リナさん、お願いだからリョウを離して下さい!お願いだから───」
「黙りなさいっ!!」
その言葉と共に、思いきり床を踏みつけるリナさん。
その音も凄まじかったが、床越しに響いてきた衝撃も凄くて思わず眉根が引き寄った。
「あんたの……っ、あんたのせいでしょ!?
あんたのせいでこんな事になったのよ!!あんたがいなかったら私がリョウと結婚してたのに!!」
荒々しい口調で、髪を振り乱しながら必死にそう吐き出すリナさんを見て、何とも言えない感情に襲われた。
────初めてだったから。
リナさんがこんなにも感情をあらわにしたのは。
ほんの今まであんなにも余裕を撒き散らしていたのに、今はその余裕なんて皆無に見えて。
その姿を見ただけで、どれだけリョウの事が好きなのか思い知らされた。