「リョウ!!」
リョウがすぐそこにいると知った途端、まるで自分じゃないみたいに体が勝手に動いた。
扉一枚隔てているのに。
リョウ姿さえまだ捉えてもいないのに。
「リョウ……!!」
まるですぐそこにリョウがいるかのように力一杯手を伸ばす自分がいた。
あの扉を開けたらリョウがいる。
あの、扉の向こうに────
「何してるの! 捕らえなさい!!」
私が地面を蹴り上げたのと、リナさんが声を上げたのはほぼ同時だった。
大して運動神経が良い訳でもない私と、普段から鍛え上げられているであろう組員達。
必死で駆け寄ろうとした所ですぐに捕まってしまうのは明白で。
「離して!!リョウー!!」
それでも、ここまで来て諦めるなんて出来なかった。
すぐそこにリョウがいるのに諦めるだなんて絶対に出来ない。
そんなこと、出来る訳がない。
「離してよ!!」
だって、私がここへ来たのは、リョウを連れ戻す為なのだから。
リョウを連れ戻す為なら、どんなことだってする。