「解放なんてしないわ。リョウは私のものだもの」

「っ、」



……何を、言ってるの?



不気味な笑みを浮かべながら悦に浸るリナさんに、得体の知れない恐怖を感じる。


表情や態度、彼女をまとう空気。

何もかも以前の彼女とは違って、まるで別人みたいだ。


よく見れば顔色も悪いし、髪型だってあんなにも綺麗に巻かれていたのに、今は巻くどころかブローさえされていなくてボサボサ。メイクも前ほどバッチリされていない。




彼女がこうなってしまった原因────

それは、リョウが嘉波組を破門に追い込んだせいだって思ってたんだけど……


今の彼女を見てると、その可能性は低そうに見える。


恨んでいるというより、リョウに依存しているような……



「……リョウの為にも解放して下さい!」

「しないって言ってるでしょ」

「病院に行かなきゃいけないです!!」

「……病院?」



訝しげに眉を顰めたリナさんに僅かな可能性を見出す。

これだけリョウに依存しているんだ。リョウの事を調べ尽くしているはず。



「お母さんが……! リョウのお母さんが危篤なんです!!」



ううん。調べなくても、元婚約者なら知っているはず。