「……え?」
リョウのお母さんが危篤……?
「そん、な……」
あと少しで会えるねってリョウと言ってたのに……
っていうか、
「リョウに連絡がつかないんですか!?」
『だからそっちに電話してんだろ!?』
「っ、ごめ、」
ナギサくんも焦っている。
そうだよね。ナギサくんはリョウの一番近くにいるんだ。
今までリョウがどんな思いで生きてきたのか、私よりも知っている。
今、誰よりもリョウをお母さんの元へ連れて行ってあげたいのはナギサくんだ。
「数分前にリョウと電話したよ。私が黒服の男の人たちに襲われたって言ったらすぐ行くって。ほんとに数分前だよ。だから、家出た所だと思うんだけど……」
リョウとの電話を切ってまだ数分しか経っていない。
それなのに連絡が取れなくなるって一体どういうことだろう?
『家にいたことは確かだ。家を出たばかりってことは───』
と、そこまで言ったとき、電話の向こうでバタン!と扉か何かが勢いよく開く音がした。
そして────
『ナギサ!リョウが連れ去られた!』
別の誰かの叫び声も。