「もしもし」

『リョウは!?そこにいる!?』

「っ、」



びっくりした。

まさか電話に出た途端叫ばれるなんて思ってもいなくて、みんなして固まってしまった。



「ど、どうしたんですか?」

『だから!リョウはいるって聞いてんの!!』



さっきよりは更に大きな声でそう問いかけられて、すぐに「まだ会ってないです」と答えた。


すると、チッと舌打ちするのが聞こえて、こちらには聞こえないぐらいの小声でブツブツ言い始めた。


明らかに様子がおかしいナギサくんに、私たちは顔を見合わせる。



「もしかして、リョウになにかあった、とか……?」



じゃないと、こんなに切羽詰まった様に電話なんてしてこないだろう。



「ナギサくん、リョウになにかあったんですか!?」

『……違う。リョウじゃない』

「え?」



リョウじゃない……?



『あんた、リョウの母親ことは聞いてる?』

「お母、さん……?」



ナギサくんの口から出てきたその言葉に、嫌な予感が脳裏を過ぎった。



「聞いてます、けど……」

『……だよね』


ハッと吐き捨てる様に笑うナギサくん。




『───リョウの母親が危篤だって連絡が入った』