電話を切ろうと耳から携帯を離したちょうどその時、かすかにリョウの声が耳に届いた。
侑真は受話ボタンを押した後、ついでにスピーカーボタンを押してリョウに話しかける。
「もしもし、リョウか?」
『……侑真?どう───』
「っ、リョウ……!」
小さかったリョウの声がハッキリと聞こえて、思わず言葉を阻んでしまった。
『……あやの? 何かあったのか?』
私の焦った声色に何かを察したのか、リョウが訝しげにそう聞いてくる。
「あのね、」
と、切り出したものの、頭がまだ混乱しているせいでそこから先がなかなか出てこなくて。
その先は私の代わりに侑真が続けてくれた。
「今、あやのを迎えにマンションに来たんだが、あやのがマンションを出た瞬間、黒服の男数人に追いかけられた」
『……黒服の男? あやのは? 大丈夫なのか?怪我は?』
「私は大丈夫だよ!」
想定内のことだと言っても、いざその通りになると動揺するのは当然のことで。
電話口から聞こえるリョウの焦り混じりの声に、慌てて自分から返事した。