『破門?……あぁ、それがさっき言ってた“片付く”ってことか』
リョウの言っていた“片付く”というのは、嘉波組を“破門する”という意味だった。
それがリナさんとの婚約を破棄するための近道であり、同時に次期若頭を一方的に放棄することへの罪滅ぼしになると思ったらしい。
元々、次期若頭の座は正妻の息子である雷神の総長のものだった。リョウはそこに割って入っただけ。
だから、たとえリョウが次期若頭と決まっていてそれを放棄したとしても、ただ元の形に戻るだけで組自体には何の支障もない。
けれど、リョウが組を引っ掻き回したことに変わりはなくて。
自分が非難されるのは自業自得で耐えられるけれど、自分のせいで母親が非難されるのはどうしても避けたかった。
そんな時、“ある情報”がリョウの耳に入ってきた。
それが嘉波組の不正疑惑だったらしい。
リョウはすぐにそれを組への置き土産にすることに決め、証拠を集めることにした。
ここ最近繁華街から消えていたのは、その不正の証拠を集めていたから。
本当ならもっと早く不正を暴く予定だったみたいだけど、お母さんの体調が思わしくなく、看病と証拠集めを同時進行でしていたため、遅くなってしまったらしい。