────リョウが緋月に来たあの日。
私とリョウが一階へ下りた後、リョウから侑真たちに重要な話があった。
それは、リョウの元婚約者であり、雷神の元姫────ヨシナミ リナのこと。
リョウからの話は簡単に言えばこうだった。
リナと婚約破棄すれば、リナが逆恨みで私に危害を加えてくる可能性があるということ。
それは、実際にリナと対面した私も思ったことだった。
あの時の彼女の双眸を思い出すだけでゾクリと肌が粟立つ。
“リョウは渡さない”
────彼女はリョウに依存している。
だから、自分から婚約者を奪った私をきっと許さないはず。
『そんなの組長に言ってもらえばいーじゃん。アンタの親、その女の親より上なんだろ?』
リョウから聞いた話によると、リナの父は蓮見組の本部長という役職を与えられている嘉波組の組長で、リョウのお父さんとは割と近い間柄らしい。
だから、瑠衣が言うようにリナさんのお父さん───嘉波組長さんに言ってもらえば万事解決だと思ったんだけど……
それが、そんな簡単なことではないらしく……
『嘉波組は破門する』
私たちが知らない間に結構ややこしいことになっていたみたいだ。