「成さん!」
「了解~」
「ひゃぁ……!」
侑真の呼びかけに緊張感皆無で返事した成くんは、返事に緩さに反して、それはそれは見事なハンドルさばきでUターンした。
そのせいで左隣にいるなっちゃんに思いっきりもたれかかってしまい、
「ごめんね、大丈夫?」と慌てて謝罪して、体勢を立て直した。
「ごめんごめん!前から来てたからさ」
「えっ」
前から?
その言葉にすぐさま振り返ると、さっきまで私たちがいた場所に一台の真っ黒なセダンが停車していた。
その車に乗り込んでいたのは、さっき襲ってきた黒服の男たち。
成くんは前方から来た車があの黒服の男たちの仲間だと瞬時に気付いてすぐにUターンしたんだ。
「侑真、アイツらもしかして────」
私と同じように振り返った瑠衣が車を確認しながら訝しげにそう呟く。
「……あぁ。リョウ言った通りになったな」
“リョウの言った通り”
それは、リョウがこの事態を予測していたという意味だった。
そう。
リョウはこうなることを予測していたんだ。
自分が若頭の地位を捨てると決めた時点には既に。