「如月さん、よかった。まだいた。
ごめん遅れて‼」
あれ?この人‥‥‥
「亀井くん、何?」
チャラチャラ系の亀井くんだ。
私の嫌いなタイプ。
「あのさぁ、俺と付き合わない?
俺、如月さん、可愛いって前から思ってて「ごめん。私チャラい人嫌いだから‼
それに、私が好きなのは郡先輩だから」
亀井くんの告白??を遮って、頭を下げた。
「郡先輩?あー、あの冷たい人ね。
どこがいいの?
もし付き合ってもうまくいかないんぢゃない?
ねっ、俺優しいよ‼
付き合って見ようよ‼」
どんどん、壁に追い込まれ、ついには両手を壁に押し当てられる。
「いやっ!!離して。
亀井くんなんて好きぢゃないから、私が好きなのは郡先輩なの。
離して‥‥よ」
押し返そうと力を入れても、男の力には勝てなくて、そんな亀井くんは、どんどん、顔を近づけてくる。
いやだ。
キスするなら、大好きな郡先輩がいい。
涙が、頬を加速する。
ドン、と急に手が解放され、暖かい大きな手が私を包んだ。
「なにしてんの?」
軽蔑する様な顔をした、郡先輩がいた。
「なにしてんの?一年坊主は、こんなとこで盛ってやばくない?
これ、犯罪だよ。彼女泣いてるし。
好きなら、相手の嫌がることやめろよ」
郡先輩の言葉に、亀井くんは真っ赤になって去っていく。
「郡先輩、なんで?
なんで、助けてくれたんですか?」
冷たい先輩で、有名な郡先輩が助けてくれた。
「嬉しかったからかな。それに、襲われてる子ほっとくほど、冷たくないから俺。」
そう、言った彼は笑ってた。
涙も、引っ込んで郡先輩を見ていた。
「君、如月 陽菜ちゃんだよね。」
なんと、王子が私を知ってた‼
「なんで、名前‥学年違うのに」
「可愛いって、上級生にも評判だよ。目付けてるやつたくさんいるし、気を付けな!ぢゃあね、陽菜‼」
陽菜って呼び捨て!!
嬉しい。この日から、私の王子への印象が変わり始めた瞬間だった。
ニコニコ笑う私に、祭がポッキーを加えながら聞いた。
「どうしたの?なんかいいことあった?」
「えっと、亀井くんに迫られてキスされそうになったとこを、郡先輩に助けて貰ったの!
まぢ、好き」
「はああ?亀井、最悪。つか、大丈夫?ってか大丈夫そうぢゃん。よかったね。
つか、あの先輩が女助けるとか、始めて聞いた。
もしかしたら陽菜のこと好きなんぢゃない?」
祭の言葉に赤くなる私。
もし、そうならいいな。
郡先輩の特別になりたいな。
郡先輩の冷たい印象が、崩されてく。
陽菜って呼ぶ優しい声も。
私には特別で。
幸せな物だった。
「あっ、陽菜。前。」
祭のくぐもった声に振り向くと亀井くんがいた。
「どうしたの?その髪!!」
チャラい亀井くんは、目の前には居なくて黒髪の亀井くんがいた。
金髪の亀井くんどこいった?
「これで、チャラくない?黒髪変?
これで、恋愛対象になる?」
それって。。
「俺、本気だから。チャラいって好きな子に言われたままぢゃ、悔しいから髪染めて見た。
もう、他のやつと話さないし、陽菜だけだから。」
ドキッ。。
不覚にも郡先輩以外にときめいてしまった。
でも、ここ教室なんだけど、みんないるし。
みんな見てるし。
恥ずかしかったり。けど、亀井くんは気にしないで私を抱き締めた。
「まぢで、好きだから。」
「陽菜。」
誰かに名前を呼ばれて振り向くと郡先輩が、手招きする。
郡先輩の瞳は鋭く、亀井くんに向けられているように見えた。
郡先輩に、近づこうとする私の腕を掴んで離さない。
「亀井くん、離して‥痛いよ。」
だけど亀井くんは、離さない。
ますます力は強くなるだけ。
「痛いッ!「離せよ!何やってんの?」
苦痛に顔を歪める私の耳に届いたのは、紛れもなく郡先輩だった。
郡先輩は、無言で私の手をつかみ、亀井くんもあんぐりとした顔をして、見ている。
ギャラリーも、何とも言えないような顔をして、見ていた。
女に、冷たいで有名な郡先輩が
唯一、助けた女の子。
特別な様に見えて悔しそうに顔を歪める女子や、羨ましそうに見る男子の視線を感じながら私は、郡先輩についていった。
先輩に手を引かれ誰もいない使われてない空き教室に、連れてこられ。
どきどきして、壊れてしまいそう。
「陽菜。大丈夫?」
優しい先輩の声が耳に届いて、安心からポロリ、と涙が零れた。
「先輩。助けて、くれてありがとうございました。
怖かったです。」
そう。怖かった。
みんなが教室にいたのに誰も助けてくれなくて、祭もそばに居なかったし、不安で。
だから、、
「陽菜って、呼ばれて嬉しかった。
ありがとうございます」
泣きじゃくる私の頭をポンポン、とする大きな暖かい手に安心して
また、涙が流れた。