冷たい彼に恋をしました。。

「俺ん家くる?近いし。そのまま、返す訳にはいかないし、それに‥‥なんもしないから」



うん、としか頷けなかった。


強い意志を、持った目に逆らえなかった。



きっと、亀井くんなら大丈夫、とどこか心の中で思った。



歩いて徒歩五分。



マンションの最上階に、入った。


鍵穴に差し込む亀井くんを見て



「亀井くんって1人暮らし?」



「うん、そうだけど。入りなよ」



1人暮らし。1人暮らし、本当に。



さっきのこともあり、玄関先で躊躇う私にクスリ、と笑う。


「大丈夫だよ、なんもしないから。多分ね」



ニヤリ、と笑う亀井くん。



絶対、からかわれてるよね私。



不思議と怖くなかったから。
「はい、これ、シャワーしてきていいよ」



いきなり、タオルを渡され戸惑う。



だけど砂まみれの私の制服。ブラウスは破られてるし、私はタオルを受け取った。



「ありがとう、亀井くん」



私は、亀井くんにお礼を言いシャワールームに消えた。
☆廉side☆


「はああ、本当可愛いよな」



俺、亀井 廉〈カメイ レン〉

俺が、あの時間にあの場所を通ったのは軌跡で。

最初、陽菜ちゃんだって、わからなかったけど絡まれて助けを求めてる女の子助けないなんてできなくて。


近づけば近づくほど、相手の子が陽菜ちゃんだと分かって苛ついたのはまぢで、気づいたら男共を蹴散らせていた。



陽菜ちゃんは、瞳を潤ませ白い肌を促していた。


長い髪の毛は、ボサボサで土が付いてる。


本当なら、半殺しにしたい気持ちを抑えたのは陽菜ちゃんが泣いていたから。


とりあえず家にあげたものの、なんだか緊張してる陽菜ちゃんの緊張が移りそう。



今夜大丈夫かな。
シャワーが汚い砂まみれの制服を洗った。


髪に付いた土を、綺麗に洗った。


私‥‥‥‥あの時亀井くんが居なかったらどうなってた?


思い出して身震いした。


上がって洗濯機の上にスウェットがあったけど、下は大きくて、やめた。


上のティーシャツだけを着たら、ミニスカートみたいになって、ちょうどいいし。


気づいたら洗った制服は、洗濯機の中で回っていた。


「亀井くん、上がったよ。


本当に何からなにまでありがとう」
あれ、亀井くん、固まってる?


私、変かな?


「下どうした?」

下?


「あのね、借りた下の方は大きくて履けなかったから、上だけ借りたんだけど。」



どうしょう。固まってる‼


「本当、無自覚だよね、陽菜ちゃんは。ってか、なんであんな時間にあんなとこいたの?

先輩は?付き合ってるんだろう。」


「‥‥‥‥先輩とは、付き合ったけど、別れて言われたから」



気持ちが沈む。


ガタン、と、立ち上がった亀井くんは驚きを隠せない。

「なんで?あんなに好き合ってたのに?」



好き合ってた?


違う違うよ。


私ばっかり好きだった。


どうしょうもなく好きだった。



私の気持ちばかり強すぎて、結局こうなる運命だったの。



「違うよ。


どうしょうもなく好きだったのは、私だけだった。


先輩は、彩未のことが好きだっただけ。」



「彩未?」


亀井くんは彩未を知らない。


「これが彩未だよ。私の双子の姉。彩未は、植物人間だった。


つい、さっき目を覚ました。彩未の彼氏は、郡先輩だった。


私は、彩未が目覚めるまでの間の彼女だったの。


彩未が、目覚めたら、私なんていらなかったんだよ。


私は………私は!!!」



フワリ、と身体を抱き締める亀井くんがいた。



「駄目、優しくしないで!

私、今優しくされたら、亀井くんを利用しちゃうから‼


だから‥‥‥‥「いいよ。利用されてもいいよ。だって仕方ないよな。

どうしょうもなく好きなんだから。


まだ心の中が、郡先輩でもいいから俺と付き合えよ」



「うん、ありがとう」



本当に、いいんだろうか。



私の選択はこれでいいのだろうか。


だけど、私は彼に寄り添い彼の顔が近づく。


そして‥‥初めてのキスをした。



偽りのキスを‥‥。


避けようと思えば避けられた。


だけどしなかったのは、少なからず彼に想いが向いてるからだと思う。



優しい亀井くんを知れば知るほど、好きになっていた。
私が亀井くんを好きになれば、このキスも偽りぢゃなくなる。


亀井くんを好きになれば、心のモヤモヤも消える。



「亀井くん。」



「廉って呼んで。


陽菜ちゃんだけ、特別に呼ばせてあげる」



柔らかく笑う廉くん。


釣られて笑った私の顔を見た。



「何??」



首を傾げる私の耳元で囁く様に言った。




「可愛いよ、陽菜」



ドキン、と高鳴る胸。



「恥ずかしいから、もう言わないで‼」



照れる私にクスリ、と笑う廉くん。


恥ずかしくて、廉くんの顔が見れない。


「私、もう帰らないと。」

立ち上がる私を抱き締める廉。



「行くなよ。


今日は離したくない」



離したくないなんて、初めて言われた。


「大丈夫だよ、なんもしないから。


まあ、キスぐらいはありかなと思うけど、今日泊まってかない?」



いきなりの、お誘いに顔が赤くなる。


なんもしない、って言ってるしどうしょう。



たしかに、今はまだ帰りたくない。


「うん、一緒に居たいな」



私の本音。


少しずつ、君に心を奪われてると気づき始める。


私は家にTELを入れると安堵から、ソファーに腰を落とす。


「しかし、これはないよね」



「これ?」


「素足出しすぎ。俺、寝れるかな、今日。


陽菜、俺のベット使って。」



えっ………?


「ぢゃあ、廉くんはどこに寝るの?」


ここ、とソファーを指差す。



「いいよ、悪いよ。


私がソファーでいいよ。」



必死に言って見るも、いいから、と部屋に招かれ、バタリ、とドアが閉まる。


なんだか寂しくて枕を抱えた。


部屋から、出てソファーに近づく。


背を向けてる廉くん。


「廉くん。」



ガバリ、と起きる廉と目が合う。