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如月 彩未〈キサラギ アミ〉の病室の前。
ガラリとドアを開けて締め切られてるカーテンを開けた。
機械に繋がられてる私の双子の姉。
「彩未、聞いて。私、彼氏出来たんだ。同じ学校の先輩で、名前は‥‥‥郡 日向先輩」
ピクピク、と動かない指先が動いて。
「彩未‥‥‥?」
彩未の口元が動いた。
「゛ひ、なた゛」
ひ、なた?ひなた?日向?
私の頭の中は真っ白になってゆく。
あの日の女の子の言葉。
「あなた、郡先輩の彼女に似てる」
私に‥‥‥‥‥似てる?
そんなの、私ぢゃなきゃ、彩未しかいない。
もしかして、先輩は彩未の‥‥‥‥‥‥
1人ぼっち、教室の隅で、1人の女の子が囲まれてる。
「先輩と別れてくんない?あたし、好きなんだよね。
だから、別れて」
「無理です。」
怒ってる女の子と、彩未?
「そう。なら、いいわ」
潔く、諦める女の子達を彩未は見てた。
放課後、彩未のそばにきた男の子。それは、まさしく、郡先輩だった。
「彩未、あのさ、俺と別れて欲しい」
突然の別れの言葉。
「いや、なんで?」
そう問う彩未に彼は。。
「嫌いになったから、だから悪い」
そう答えた。
「意味もなく、嫌いになった言われて別れられないよ。
待って日向‼」
日向先輩を追いかける彩未。
日向先輩は、どんどん逃げてく。
階段を踏み外し、彩未は転がり落ちた。
地面に、広がる赤い血。
たくさんの悲鳴。
救急車を呼ぶ声。
全て作り物の様に思えた。
この夢は、誰の夢‥‥‥‥?
彩未なの?
語りかけてるの?
私は、彩未の手を握った。
そして、願った。
"運命が変わります様に"と。。
違う。彩未は学校の屋上から飛び降りて‥‥ってあれ?誰が言った?
たしか、女の子から聞いたんだ。
彩未が、彼氏に裏切られて学校の屋上から飛び降りたって。
本当は違ったの?
彩未は郡先輩の彼女だったの?
「彩未、彩未は日向先輩の彼女だったの?」
誰が答えるわけぢゃないいつもなら。
「‥‥‥日向に会いたい。」
パチリ、と瞼が開く。クルリ、とした瞳が開いた。
「彩未‥‥‥‥彩未は日向先輩の彼女?」
もう何も驚かない。
「ごめん、陽菜」
やっぱり。
それが答えだってわかった。
とりあえず目を覚ました彩未の担当医師に告げた。
スマホを操作する指が、送信ボタンに触れた。
相手先は、郡先輩。
「(彩未が、目を覚ましました。彩未は、日向に会いたいといってます。彩未が待ってます。
必ず来て)」
必ず来てなんて、言って本当は来ないでって思ってる私はひどい女だ。
彩未が目を覚ましたのが、うれしい反面。
既読のままの、返信はなかった。
だけど彼は、ちゃんと来た。
額に汗を滲ませながら。
「先輩‥‥‥‥」
「彩未は?元気なのか?」
彩未‥‥‥‥‥
先輩が呼ぶカーテンが、ユラユラと揺れて開かれた先には彩未。
「日向ッ!会いたかった。」
泣きじゃくる彩未の肩を引き寄せる様に、抱き締めた。
ズキン、と心が痛んだ。
先輩の肩が微かに揺れた。
腕が震えてた。
「 よかった。よかった、目覚めて。
少し休め。」
こんな優しい先輩見たくないよ。
私ぢゃない、彩未に大しての振る舞い。
嫉妬に顔を歪ませた私に彩未が、不思議に首を傾げる。
「陽菜、どうしたの?日向と知り合い?」
私の彼氏だよ、と言おうとしたのに。
「学校の後輩だよ」
彼はそう言った。
なんで‥‥‥‥‥?
私、先輩の彼女なのに。
「そっかぁ、日向と同じ学校なんて、いいな。今から編入試験受けたら受かるかな。
私も、日向とおんなじ学校行く‼」
浮かれた声の彩未が、初めて憎く思った。
「陽菜ちゃん、ちょっと話あるんだ。いい?」
陽菜ちゃん?
陽菜って呼び捨てだったのに、なんでそんなよそよそしいの?
なんとなく、この先のことが予想出来てた。
暗い廊下を歩く。自販機の明かりが、輝いていた。
「陽菜、ごめん。別れて。俺は、彩未を放っておけない。彩未のそばにいたい。
ごめん」
チカチカ光る明かりが、映る。
「私は、彩未の変わりだったの?
彩未が、目覚めたら私なんかいらなくなったの?
先輩は、そんな人ぢゃない。
先輩は、いつだって優しかった。
どうして。」
どうしてなのか、分からない。
行き場のない不安な気持ち。
チカチカ光る明かりと一緒に交わりたい。
「陽菜、ごめん。サヨナラ‥‥」
彼は私から離れてく。。
床にポタリ、と涙が落ちる。
シミを作ってく。
私は床に座り込み、泣きじゃくった。
あれから、1人病院を抜け暗い夜道を歩いた。
スマホで時間を確認する。
19時か。
とぼとぼと、歩いていると誰かに肩がぶつかった。
「いて!どこみて、あれ?メチャクチャ可愛い子ぢゃん?1人?お兄さん達とイイコトしない?」
ニヤリニヤリ、と不気味に笑う金髪の男。
「やめてください!離して」
「大丈夫だよ、怖くないよ。
最高に気持ちイイコトしてあげるからほらおいで」
「いやぁ!!!!」
凄い力で引き寄せられ、地面に押し倒される。
馬乗りになる1人の男と、両腕を押さえつける男。
制服のミニスカートから覗く白く細い脚。
華奢な腕。
なんとなく、わかった。
彼らが、これからしょうとしてること。
怖くて声が出せない変わりに涙が流れた。
「やべー、可愛い。まぢ、興奮してきたし」
いや。
先輩、助けて‥‥‥‥‥
制服のリボンを解かれ1人の男に、渡すと両腕を縛られる。
「俺、上な」
「ぢゃあ、俺下な」
ニヤリニヤリ、と笑う男に吐き気がする。