冷たい彼に恋をしました。。

郡先輩は、無言で私の手をつかみ、亀井くんもあんぐりとした顔をして、見ている。


ギャラリーも、何とも言えないような顔をして、見ていた。


女に、冷たいで有名な郡先輩が


唯一、助けた女の子。



特別な様に見えて悔しそうに顔を歪める女子や、羨ましそうに見る男子の視線を感じながら私は、郡先輩についていった。
先輩に手を引かれ誰もいない使われてない空き教室に、連れてこられ。


どきどきして、壊れてしまいそう。



「陽菜。大丈夫?」



優しい先輩の声が耳に届いて、安心からポロリ、と涙が零れた。



「先輩。助けて、くれてありがとうございました。


怖かったです。」



そう。怖かった。


みんなが教室にいたのに誰も助けてくれなくて、祭もそばに居なかったし、不安で。



だから、、


「陽菜って、呼ばれて嬉しかった。


ありがとうございます」


泣きじゃくる私の頭をポンポン、とする大きな暖かい手に安心して


また、涙が流れた。
「先輩、私、先輩が好きです」



流れで言った言葉。


今言わなきゃチャンスが掴めない気がした。


「俺、冷たいよ?いいの?」



本当は冷たくないの知ってる。


だって今まで出会った先輩に、冷たいことなかった。


私には優しかった。


うぬぼれでもいい。


「はい。それでも先輩が好きだから」



先輩の顔を見ると優しく私を見る。


「ぢゃあ、彼女な」



うそー!!


私、先輩の彼女になりました。
先輩に気持ちを伝えられて本当によかった。


私は、先輩の手を握って歩いた。


今が幸せだったから。


分からなかった。


私達を見る黒い影に。


先輩と手を繋いで歩いた。


廊下、行き交う人、人、人。


みんなが見てる。


その中には亀井くんもいる。



亀井くんから視線を反らしつつ下を向いた。


亀井くんの視線を背中に感じ、歩いた。



ポンポン、と背中に、感じる優しく大きな手に安心し歩き出す。


パッと振り向くと亀井くんは居なかった。。
「見た?あの、郡日向に、彼女?女嫌いで有名なんに信じられない。」


誰かが言った。


郡先輩に彼女出来るのが、そんなに信じられないのかな?



「けどさぁ、私さっきから気になるんだよね。


なんか、見たことあるんだよね。あの子。一年前に、二人歩いてたの見たんだ。


かなり前から付き合ってるってこと?」




えっ‥‥‥‥‥‥‥‥?





一年前、私は、郡先輩にはあってないよ。


「どう言うこと?それ」



私は、迷わず女の子達に詰め寄る。


女の子達は、急に話しかけられびっくりしていた。



「えっ、ああ。あなた、一年前に郡先輩と手を繋いで歩いてたでしょう?ぬいぐるみ、うさぎのぬいぐるみ、抱き締めて喜んでた顔、可愛いカップルだな、って思ってたから、印象深くて」



うさぎのぬいぐるみ‥‥‥‥?



あれ、なんだか、不思議と胸がぶる、と震えた。



嫌な汗まで流れだし、気持ちが震える。


身体の震えが止まらない。。



「ちょっと、大丈夫?どうしたの?」



女の子の声が遠くに聞こえる。


"陽菜‼"



誰かが、私を呼ぶ声もこだまして、どんどん、きこえなくなってゆく。


私は、意識を手放した。。
気づいた時は私は、ベットの中だった。


鼻につく、薬品の匂い。見慣れた部屋。


ここは、学校の保健室だ。



カーテンが開かれて、そこにいたのは郡先輩だった。



「郡先輩。どうして?」



一瞬、訳が分からず混乱する私。


「大丈夫だよ。陽菜」


優しく髪を撫でる手つき。



なんだろう、安らぐこの気持ち。


「なんか、不思議なんですけど‥‥前から先輩のこと知ってたような気がして、先輩?」



なんだか、先輩の様子が変だと気づく。



「いや、何でもないよ」


気のせい??


「あっ、そうだ。そろそろ日向先輩って呼びたいなって「あのさ、日向って呼ばないで。」



えっ‥‥?


「名字にして」



どうしてって言う間もなく、"分かりました"と告げた。



先輩の様子が、変だと気づいてた。


だけど優しい笑顔を、見ると頷くことしかできない。


聞きたいこと、あるのに聞けなくて笑顔を返すしか出来なかった。



心の中は、泣きたくて泣きたくて仕方ないのに。