冷たい彼に恋をしました。。

軽蔑する様な顔をした、郡先輩がいた。


「なにしてんの?一年坊主は、こんなとこで盛ってやばくない?


これ、犯罪だよ。彼女泣いてるし。

好きなら、相手の嫌がることやめろよ」


郡先輩の言葉に、亀井くんは真っ赤になって去っていく。


「郡先輩、なんで?


なんで、助けてくれたんですか?」



冷たい先輩で、有名な郡先輩が助けてくれた。



「嬉しかったからかな。それに、襲われてる子ほっとくほど、冷たくないから俺。」



そう、言った彼は笑ってた。


涙も、引っ込んで郡先輩を見ていた。


「君、如月 陽菜ちゃんだよね。」



なんと、王子が私を知ってた‼


「なんで、名前‥学年違うのに」


「可愛いって、上級生にも評判だよ。目付けてるやつたくさんいるし、気を付けな!ぢゃあね、陽菜‼」



陽菜って呼び捨て!!


嬉しい。この日から、私の王子への印象が変わり始めた瞬間だった。
ニコニコ笑う私に、祭がポッキーを加えながら聞いた。

「どうしたの?なんかいいことあった?」


「えっと、亀井くんに迫られてキスされそうになったとこを、郡先輩に助けて貰ったの!


まぢ、好き」


「はああ?亀井、最悪。つか、大丈夫?ってか大丈夫そうぢゃん。よかったね。


つか、あの先輩が女助けるとか、始めて聞いた。

もしかしたら陽菜のこと好きなんぢゃない?」


祭の言葉に赤くなる私。


もし、そうならいいな。


郡先輩の特別になりたいな。
郡先輩の冷たい印象が、崩されてく。


陽菜って呼ぶ優しい声も。


私には特別で。


幸せな物だった。


「あっ、陽菜。前。」


祭のくぐもった声に振り向くと亀井くんがいた。


「どうしたの?その髪!!」



チャラい亀井くんは、目の前には居なくて黒髪の亀井くんがいた。


金髪の亀井くんどこいった?
「これで、チャラくない?黒髪変?

これで、恋愛対象になる?」


それって。。



「俺、本気だから。チャラいって好きな子に言われたままぢゃ、悔しいから髪染めて見た。


もう、他のやつと話さないし、陽菜だけだから。」



ドキッ。。



不覚にも郡先輩以外にときめいてしまった。



でも、ここ教室なんだけど、みんないるし。


みんな見てるし。


恥ずかしかったり。けど、亀井くんは気にしないで私を抱き締めた。



「まぢで、好きだから。」
「陽菜。」


誰かに名前を呼ばれて振り向くと郡先輩が、手招きする。


郡先輩の瞳は鋭く、亀井くんに向けられているように見えた。


郡先輩に、近づこうとする私の腕を掴んで離さない。


「亀井くん、離して‥痛いよ。」



だけど亀井くんは、離さない。



ますます力は強くなるだけ。


「痛いッ!「離せよ!何やってんの?」



苦痛に顔を歪める私の耳に届いたのは、紛れもなく郡先輩だった。
郡先輩は、無言で私の手をつかみ、亀井くんもあんぐりとした顔をして、見ている。


ギャラリーも、何とも言えないような顔をして、見ていた。


女に、冷たいで有名な郡先輩が


唯一、助けた女の子。



特別な様に見えて悔しそうに顔を歪める女子や、羨ましそうに見る男子の視線を感じながら私は、郡先輩についていった。
先輩に手を引かれ誰もいない使われてない空き教室に、連れてこられ。


どきどきして、壊れてしまいそう。



「陽菜。大丈夫?」



優しい先輩の声が耳に届いて、安心からポロリ、と涙が零れた。



「先輩。助けて、くれてありがとうございました。


怖かったです。」



そう。怖かった。


みんなが教室にいたのに誰も助けてくれなくて、祭もそばに居なかったし、不安で。



だから、、


「陽菜って、呼ばれて嬉しかった。


ありがとうございます」


泣きじゃくる私の頭をポンポン、とする大きな暖かい手に安心して


また、涙が流れた。
「先輩、私、先輩が好きです」



流れで言った言葉。


今言わなきゃチャンスが掴めない気がした。


「俺、冷たいよ?いいの?」



本当は冷たくないの知ってる。


だって今まで出会った先輩に、冷たいことなかった。


私には優しかった。


うぬぼれでもいい。


「はい。それでも先輩が好きだから」



先輩の顔を見ると優しく私を見る。


「ぢゃあ、彼女な」



うそー!!


私、先輩の彼女になりました。
先輩に気持ちを伝えられて本当によかった。


私は、先輩の手を握って歩いた。


今が幸せだったから。


分からなかった。


私達を見る黒い影に。