5時ピッタリに翔くんが姿を現した。


ビクンッ……。


わあっ……来ちゃったよ……。


翔くんの声を聞いたとたん、バクバクと鳴る心臓。



「じゃ行こっか~」



ノリノリな杏ちゃんの言葉を筆頭に、みんなで改札をくぐる。


歩いている最中、隣に翔くんがいる気配を感じたのに、あたしに話かけてくることはなかった。



「……」



怒っちゃったかな……。


……そりゃ怒るよね。


あれだけ着信を無視してたら……。


電車に揺られて会場へ向かうまでの間、あたしは後悔しっぱなしだった。




花火大会が行われる河川敷には、屋台がズラリと並んでいる。


焼きトウモロコシやたこ焼きの匂い。


どれもおいしそうで、目移りしちゃうのが毎年のことだけど。


今はそんな気分じゃない。


今年は初めて好きな人と来ているのに、どうしてこんなに苦しいんだろう……。


……すごく悲しいよ。