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そして夕方。
何度も髪型の練習をしたおかげで、とてもうまくできた。
ネイルも上手に塗れた。
普段しないメイクも薄くして。
浴衣はお母さんに着せてもらって。
準備は万端だけど……行きたくないとさえ思ってしまった。
あんなに楽しみにしていた花火大会なのに……。
「……行ってきます」
それでも行かないわけにもいかず、4時半ごろに家を出た。
約束の時間は5時。
ちょうど10分前くらいにつき、みんなもだいたいそれくらいに集まったけど。
「翔だけまだ来ねえな」
スマホをいじりながら言う侑汰くんは、宣言どおり、紺色の甚平。
すごく似合っていて、カッコ良い。
友梨ちゃんは濃紺に朝顔が描かれた大人っぽい浴衣で、杏ちゃんはピンクがかった可愛らしい浴衣。
みんなでそれぞれの浴衣を見せ合っていると。
「……わり、遅れて」