「誰、それ……」
「だから……前にも言ったけど……藤井だって……」
「その子なら、つき合ってないって言ったじゃん」
「あの時はそうだったけど、状況が変わったんだよ……」
「何それ。あたしのニセカノやった時みたいに、またなにかいい加減なことしてるの?どうせまたつき合ったフリでもしてるだけなんでしょ?」
「違う、俺が好きなんだよっ……」
「……っ」
「……彼女のことが」
そうだ。
彼女がいるから付き合えないんじゃない。
さっき松島にはそう言って告白を断ったが。
俺に好きな奴がいるから、なんだ。
たとえ、花恋の気持ちが冷めて、俺がフラれたとしても……。
……花恋……。
さっきの、俺を見る泣き出しそうな目を思い出す。
「気持ちは嬉しいけど……悪い……」
朋美には、そう告げることしか出来なかった。