『あたしは翔の便利屋さんじゃありません~』
ってことは、今日だけじゃないんだね。
いつも、翔くんは朋美ちゃんに教科書を借りているんだね。
忘れ物をしてないわけじゃなかった。
「今度行く花火大会の特集がこの雑誌に組まれてたの!」
「あー、俺もそれ買った~~」
杏ちゃんの持ってきた雑誌を元に、ワイワイガヤガヤと始まるけど……なんとなく、あたしは気分が乗らなかった。
みんながはしゃぐその輪にも入れず、さっきの光景ばかりを頭の中で繰り返してしまう。
「藤井さん、どうかしたの?」
あたしのことを未だに名字呼びする智史くんが、あたしの異変に気づき声をかけてきてくれた。
「え、あ……」
「あ、翔なら、ちゃんと学校来てるよ。ただ、今ちょっとどっか行ってるだけ。……って、学校に来てることくらい知ってるか」