ひとりのあたしに"逃げる"なんて選択肢はない。


目をつむったまま、くるりと振り返り。



「す、すみませんッ!」



腰が折れるんじゃないかってくらい頭を下げた。


今まで平和に過ごしてきたのに。


目を付けられるような生徒じゃなかったのに。


……あ。でももうスマホの件で目をつけられてるのかな。


この間、青山くんだけ怒られて、あたしが逃れたツケが今頃回ってきたのかも。


悪いことをして、逃げられるわけないんだよね……。



「クックックッ……」



あ、れ?


怒られると思ったのに、聞こえてきたのは笑い声。


ゆっくり頭をあげて見えたその顔に驚愕した。



「あ、青山くんっ……!?」



あたしを見て笑っているのは青山くんだった。



「ど、どうしてっ……」



手を口に当てて、呆然とする。


会いたい、と願っていた人が目の前に現れて、夢なんじゃないかと思う。