「1組の青山くん、笹本くんを殴ったらしいよ」
「うわー、暴力とかサイテーじゃん」
1年生のフロアは、朝からそんな会話で持ちきりだった。
私立の進学校での暴力事件という事態に、みんなの関心度の高さもハンパない。
そのせいで、昨日までささやかれていたあたしのウワサが、いっぺんに消えてしまった。
早くウワサが収まってほしいと思っていたけど、皮肉にも、それが青山くんのウワサで消えるなんて……。
きっと、青山くんの耳にもこのウワサは入ってるよね?
自分のウワサが流れる辛さは分かるから、青山くんが今どんな心境で居るのかを考えたら、胸が苦しくてたまらない。
「ほんとは、あの落書き犯、青山だったりして」
「マジ!?責任なすりつけってワケ!?」
「わー、それがほんとだったら最低だな」
そして、そのウワサはとんでもない方向へ話が動いていた。