「もうアイツの名前は出さないでって言ってるでしょ!」



笹本の名前を出したことは、朋美にとって苦でしかないようだ。


わかってる。


笹本のせいで、朋美は沢山泣いたし沢山傷ついた。


でも、今回は……頼む。



「大事なことなんだよ」


「知らないよっ、離してってば!」



俺達がつき合っていた……ということは、朋美があちこちでばらまいていたせいで、知っている奴は知っている。

別れたということも。


そんなふたりが廊下の真ん中で揉めていれば注目を浴びる。


俺は有無を言わさず朋美の腕を引っ張り、このフロア先の人気の少ない所まで連れて行った。



「もうっ、ほんとになんなの……」



苛立ちを隠さない朋美。

悪いとは思うが、俺だって引き下がれない。


侑汰が言うには、藤井への中傷は笹本の仕業だっていうじゃねえか。


なんも変わってねえな。


女にだらしない所も、腹黒い所も。


藤井のことも、モノにしたら弄ぶつもりだったんだろうか。