「あ、杏ちゃ……」
後ろ髪を引かれる思いのまま、あたしは逃げることすらできず青山くんに手をひかれるままついて行くしかなかった。
「ひゃあ~~~っ!」
杏ちゃんの色めきたった声を背後に。
ーーガラッ。
あたしの手を引く反対の手で、図書室のドアを開ける青山くん。
もう、何度も来慣れた図書室。
そこは誰もいなくてがらんとしていた。
テスト中なのに、誰も勉強している人いないんだ。
むしろ、テスト中だから、誰もいないのか……。
なんて必死に頭の中で別のことを考えようとするけど……青山くんに握られた右手が、熱くて……。
握るっていうより、掴まれてる、が正しい表現。
強引に掴まれているからこそ、胸が熱くなる……。
「わかんないのどこ」
席についてようやく手を離された。