「あのさ」
ふわっと、柔らかい風が吹く。
笹本くんの黒髪を優しく撫で上げた瞬間。
「俺、花恋ちゃんのことが好きなんだ」
告げられたのは、思いもかけなかった言葉。
あたしを……好き……?
頭の中が、一瞬真っ白になった。
「俺と、つき合って下さい」
言ったあと、口を真一文字に結んだ笹本くんは、あたしを優しく見つめた。
……ウソ。
あたし、笹本くんから告白されてる……?
好きな人から告白される。
こんなの、夢にも思ってないことだったのに。
「……」
あたしは笹本くんが好きで。
失恋したかもしれないと思っていたのは、誤解だった。
だったら、何も問題はないはずなのに。
手放しで喜ぶところなのに。