「ねぇねぇ智史くんッ」



もちろん、杏ちゃんは智史くんの元へ。


まるで尻尾でも振るように飛びつく。



「ん?どした?」



ここはここで、幸せそうでいいなぁ。


思った通り、智史くんはこんな杏ちゃんが可愛くて仕方ないらしく、いつも優しいまなざしで杏ちゃんの話を聞いてあげている。


あぁ……。


こんな時、あたしはまたあのお昼みたいに、青山くんの言うところの"ハブられ状態"になるんだよね。


青山くんはいつもこんなとき「先行ってる」と、ひとりでスタスタ行ってしまうし。



なのに今日は、



「よっ」



足を止めた青山くんが、あたしの隣に並んだ。



……え?


声をかけてくれた青山くんを驚いて見上げる。


今まではこんな場面に遭遇しても、あたしなんて眼中に入れてくれなかったのに。


親しげな態度にあたしは戸惑う。