急激な体温の上昇はキスのせいかもしれねえ……。
「でも、少し熱は高そうです」
抱えて体感した、彼女の体温。
抱えていたのもあるが、熱がこもったせいで俺もかなり汗ばんでいた。
「ありがとう。大変だったでしょ。冷たいものでも飲んでいって?」
下へ降りると、母親がそう言って俺を引き留める。
藤井に似た人のよさそうな笑顔に、つい頷いてしまいそうになったけれど。
「いえ、結構です。当然のことをしただけですから」
「ううん、なかなかできることじゃないわよ。偶然同じバスに乗ってた子を、家まで送り届けるなんて」
……本当は違うから、なんだかバツが悪いな……。
「本当に、結構ですから」
「じゃあ、お名前だけでも……」
「すみませんっ、お邪魔しました」
それにも答えず、俺は逃げるように家を後にした。