「はじめまして。同じ高校の者で、藤井さんと偶然同じバスに乗っていたんですけど、急に具合が悪くなってしまったみたいで……」


「ええっっ!?」


「近所の人に家を教えてもらって、ここまできました」


「そうなのっ、それはありがとうっ」



母親の警戒心は解けたようだが、娘が倒れたという事態にオロオロするのは変わらない。


なすすべもないように、あたふたしているから。



「あの、部屋まで運びましょうか?」



そう声をかけた。


玄関先に放っても、そのあと母親が部屋まで運ぶのは厳しいだろう。


しかもかなりパニクってる。

だったら、担いでるついでにこのまま運んでしまったほうがいい。



「じゃ、二階なんだけど……いいかしらっ……」


「はい」



誘導する母親に続いて、俺も二階へあがり藤井の部屋のベッドの上に彼女を下ろした。