「あらっ。藤井さんところの花恋ちゃんじゃないの?」



突然、知らないおばさんに声を掛けられた。


向けられるのは、さっきと同じ不審な目。


……完全に不審者扱いだな。


藤井を知ってるなら、味方につけるしかないな。



「彼女を知ってるんですか?バスの中で急に具合が悪くなって、送り届けたいんですけど、家が分からなくて」


「あら大変!!藤井さんのお宅なら、この先の角を曲がった二軒目のお家よ」



事情を説明すると、おばさんはすぐに藤井の家を教えてくれた。


助かった。

頭を下げて、藤井を抱え直して家まで向かう。


言われた通りに進むと、表札に『藤井』という名前の家を確認した。


インターフォンを鳴らすと、すぐに家の人が出てきた。



「花恋っ!?え!?」



そして、俺と藤井を見比べる。


そりゃあ驚くよな。

グッタリした娘が、見ず知らずの男に抱えられてやってきたら。