「203号室?どんな人だったかなぁ?」

 目の前で考え込まれてしまった。

「思い出した。あの人なら、2ヶ月前に引っ越したよ」

 2ヶ月というと、最後にあった日からすぐだ。

「実家の方に帰ると言っていたなぁ」

「何処だかわかりますか?」

「さぁね。そうだ、預かり物をしているよ」

「え?」

「ちょっと、待ってて」

 そう言って奥に行くと、再び顔を出した。

「肩ぐらいの髪の長さの女の人が訪ねてきたら、渡してくれと。多分、あなたのことでしょう」

 白い封筒をこちらに差し出した。

「もし、半年経っても訪ねてくる人がいなかったら、捨てて下さいと言っていたよ」

「そうですか。ありがとうございます」

 封筒には何も書かれていなかった。



 玄関ホールを出て、外に出た。

 確か近くに公園があったはずだ。

 いつもここに来るときに通っていたのに、一度も入ることはなかった。

 公園に入り、ベンチに座った。

 何も書かれていない封筒。