彼女が望んでいるように、一番の友達でいられたらと。

 そうすれば、側にいられる。

 彼女の声が聴きたかった。

 声が聴けるのは、いつも彼女の恋が駄目になった時だとわかっていても。

 でも、もう駄目だ。

 気づいてしまった本当の気持ちに、嘘はつけない。

 抱きしめる腕を放したくないと。

 このまま、彼女を放したくないと。

 そう思ってしまったから。

「ありがとう」

 そう言って、彼女が顔を上げた。

 赤いウサギの目は変わらないけれど、瞳の感じが違った。

 ここへ来た時の、悲しみだけに染まった色はない。

「もう、大丈夫みたい」

「そうか」

 抱きしめていた腕を放した。

「ここは、魔法の空間みたいね」

「え?」

「ここに来ると、不思議と気持ちが楽になるの。悲しみを忘れてしまえるような気がするの」

 それは翼を休める鳥のように。

 だけど、知っている。

 またここから飛び立っていってしまうことを。