ニコニコしながら私を誘ってくれる蒼だけど、私は断った。
 普段、何もなければ喜んでホイホイ付いて行くけど、今はそんな呑気な気持ちでいられるワケがない。

「サンキュー! でもぉー、その日は用事が有ってー」

 笑顔でこう、テキトーに言葉を並べて断ったのだ。

 そしてその日、上手く変装した私は(大学で演劇部入っているから変装なんて得意なのだ。
 この時の格好はシンプルな白Tに下はコーデュロイボトム。
 上から安物の薄黒ジャケットを羽織り、キャップと黒縁メガネで素顔を隠す)アグルを訪れた。

 この夜も美香はバイトに入っている。

 私は店の片隅の1人用テーブル席でディナー食べながら蒼が来るのを待った。
 あのコが来る時間は事前に調べているから、万事抜かりは無い。




 しばらくすると…