人物は鋭い視線をアキトに向ける。

「荻島美香。森山拓也の恋人だよ」

「ハァ? 恋人だぁ!」

「そうよ」

 美香は掴んだ右腕をひねり上げ、一気に相手を投げ倒した。
 コンクリの床面に倒れたアキト。

「って!」

 どうやらアキトは腰を打ったみたい。

 ロン毛とスキンヘッドが美香の前に立ちはだかった。
 そこら辺りに転がっていた鉄パイプ類を手に持っている。

「森山さん!」

 私は駆け出し、森山さんの所へダッシュした。

「何だ倉沢さん! 来ていたのか!?」

「森山さんの事が心配だったから! それよりも腕は大丈夫?」

 私は自分のハンカチを取り出すと、手際良く傷口を覆うようにして腕に巻いた。