「……さ、ちゃん、皐月ちゃん?」

ハッと我に返ると、津崎のお母さんが心配そうに私のことを見ていた。


「す、すいません。ぼーとしちゃって」

私が経験した10年前にはならないように、こうして過去へとやって来たのに、思い出すと胸が張り裂けそうになる。


「助けてくれたお礼がしたいから、うちに寄って」

「え、でも……」

「冷たい飲み物でも飲んでいって」と、物腰が柔らかい言い方で促(うなが)されて、私は思わず「は、はい」と返事をしていた。


さっきまで津崎の家に行こうかどうかと、散々悩んでいたのに、まさか津崎のお母さんに招かれて向かうことになるなんて想像もしてなかった。


「どうぞ」

家に着いて、私は脱いだローファーを綺麗に揃えた。


「……お、お邪魔します」

すぐリビングに案内されて、私は失礼だと思いながらもキョロキョロと周りを見すぎてしまう。


……ここがいつも津崎が生活している家。


キッチンの近くにダイニングテーブルがあり、テレビがある場所の前には脚の短い丸いテーブル。私はそちらに座ることになり、ソファーもあったけれど腰を下ろしたのはカーペットの上。

家の構図はうちと同じだけど内装はアジアンテイストで、家具がとてもオシャレだ。