『ああ、抗血小坂薬のことか』

「こうけっしょう、ばんやく……?」

『血栓を防ぐための薬だよ』

たしかにおじいちゃんは脳梗塞になってから血が固まりやすくなり、血流をサラサラにする薬を飲んでいた。それがパナルジンの効能だとは知らなかったけど。


「ど、どんな病気の人が飲む薬……?」

緊張感のようなものが走り、喉が詰まっているような感覚がしていた。


『うーん、詳しくは分からないけど、なんらかの問題があって血をうまく循環させられない病気の人が飲むものだと思うよ。急にこんなこと聞くなんてどうかしたの?』

私は「ううん、ちょっと気になっただけ」と誤魔化して、そのあとは普通に電話を切った。

手の中には津崎が落としたパナルジンを握ったまま。


どうして津崎が、この薬を持っていたの?

抗血小坂薬なんて、市販では売られてないものだし、病院で処方されなければ手に入らない薬だ。

ぐるぐると頭を整理してみたけれど、やっぱり答えにはたどり着けなかった。