ザッザッと、津崎の足音が今はとても切なく聞こえる。
涙がでそうになったのは、最後まで私の気持ちを言わせてもらえなかったからじゃない。まるで私から逃げるようにはや歩きな津崎の後ろ姿が、ひどく遠いものに思えたから。
やっぱり私は、津崎の特別にはなれないのだ。
私なんてしょせん、島にいる人の中のひとりにすぎなくて、津崎の心に触れることすら許されない。
この距離を埋めたいのに、埋まらない。
じわりと自分の瞳が霞んできて、ゴシゴシと目を擦っていると――。津崎のズボンのポケットから〝なにか〟が落ちた。
音もなく、砂の上でキラリと光っているそれを拾い上げるとシート状になっているアルミ箔だった。
表側に返すと、そこには白い錠剤。
紛れもなく、それは薬だった。