「だからこの島で生まれたなら簡単に出ていくな、大切にしろって、ガキの頃は耳がタコになるほど周りの大人に言われてた。まあ、今考えれば単純に若いヤツらの島離れを防ぎたかっただけだと思うけど」
……津崎がこんなに自分から喋ってくれるなんて珍しい。
私に心を許してくれてるのかもしれないし、遠くに見える島を見て感傷的になってるだけかもしれない。
だけど、同時に気づいた。
私はもしかしたら津崎に対して大きな勘違いをしていたのかもしれない、と。
「津崎って、島が大好きなんだね」
私はずっと津崎が島から出たい人だと思ってた。あることないこと不良だからと噂されて、この狭くて小さな世界のことを鬱陶しいと感じていると思ってた。
でも、いつか消えてしまう島に思いを馳せながら、この場所からこうして眺めていたことは今日を合わせても一度や二度じゃないはず。
だから津崎は海がとても似合うのだ。
その青さや水面に浮かぶ赤や黄色のブイ。蜃気楼でゆらゆらと揺れるコバルトブールの海を背景に、ぼんやりと眺める背中。私の記憶に鮮明に残っているのは、いつだってそんな津崎の姿だった。
「お前はキライだろ?卒業したら速攻、東京とかに行きそうだもんな」
図星すぎて、なにも言い返せない。