さっき歩いてきた砂の道が小さく見えるほど高い場所。ブロッコリーのように生い茂る木の中で、ここだけぽっかりと空洞があり、露出している岩の上に私たちはいる。
「まだ怖い?」
津崎の問いかけに合わせるように、ふわりと潮風で互いの前髪が揺れた。
「ううん、全然」
私と津崎は同じタイミングで腰を下ろす。
月に手が届きそうなほど、空が近く感じる。無人島にこんな場所があったなんて知らなかった。
津崎はきっとフラフラとこうして夜の島を徘徊しながら、自分だけの穴場をたくさん見つけてきたのだろう。
「静かだね」
それは息をするのも躊躇ってしまいほど。
昼間に鳴いているカモメも、テトラポットに打ち寄せる波の音も聞こえない。まるでふたりだけの世界になってしまったみたいだ。
「なあ、俺たちの島っていつか海に沈むって話、知ってる?」
津崎が穏やかな海を見つめながら言う。
「といっても何百年か後のことらしいけど」
私は知らなかったと、首を振る。島生まれではない私はいまだに溶け込めない部分があり、島の仕来たりや歴史などの話には詳しくない。
私の島への知識といえば、大昔に地底のマグマが噴火したことにより偶然できた島であることとぐらい。
「なんか年々水位が上がってるらしい。まあ、見た目じゃわかんねーけど」
いつか、島が跡形もなく消えてしまうことを想像したら、胸が痛くなった。それを私は見届けることはないだろうけど、忘れ去られてしまうのはイヤだなって。
あんなに、毛嫌いしていたくせに。