「……え?つ、繋いでいいの?」
私は目を丸くしながら聞いた。勘違いだったら恥ずかしいし、まさか津崎がこんなことをしてくれるなんて想定外だったから。
すると津崎は〝わざわざ言うなよ〟という戸惑った表情をして「じゃあ、いい」と手を引っ込める。
「待って……!繋ぐ!繋ぎますっ!」
私はすかさず津崎の右手を握った。
ドクン、ドクン、と夜の静寂(しじま)に不釣り合いな胸の鼓動。津崎の手は私が想像する以上に温かかった。
さっきまで怖さが勝っていたのに、今はそんな気持ちどこにもない。
津崎が私の一歩前を歩き、私は一歩後ろをやっぱり子どもみたいに付いていく。
津崎は今、どんな顔をしているだろう。
広い背中を見つめながら、私は大きすぎる手をぎゅっと強く握るだけ。
そのあと10分ほど歩いて、着いたのは陸地から650メートルほど離れた無人島。周囲はおよそ2.2kmほど。森林に覆われて手付かずの自然が残っている。
「ブロッコリー島って、近くで見るとこんな感じなんだね」
「は?」
ブロッコリー島は私が勝手に命名した名前。
「だって遠くから見るとブロッコリーみたいに見えない?なんか丸っぽいフォルムとか木の生え方とか緑の色具合とか」
絶対みんなも同じことを思っていると自信満々だったのに津崎は……。
「センスねえな」
バカにするようにばっさりと否定されてしまった。