しばらく海岸沿いを再び歩いて、見えてきたのは海の真ん中に浮かぶ白い道。

「あ、これって……」

私はようやく津崎が行こうとしていた場所のことを理解した。それは干潮時の時にだけ現れる砂の道。


この島ではこういう現象がたまに起きるので、観光客がこの道を渡りたいために訪れることも珍しくない。

たしか道が現れてから、渡れる時間は二時間。
それを過ぎてしまうとまた海の底へと消えてしまう。


私たちは迷うことなく、その道へと足を踏み入れた。その幅はおよそ10メートル。サンダルの感触は白浜のビーチにあった砂よりも硬くて、小さな石や貝殻のようなものがたくさん落ちている。


津崎は慣れたようにはや歩きだけど、私は少し怖い。

だって周りは海だし、その真ん中を歩いているなんて、急に水に呑み込まれてしまったらどうしようって考えてしまうから。


「……わっ!」

と、その時。キョロキョロとしすぎたせいで私は石につまずいてしまった。


「なにしてんだよ」

前を歩いていた津崎がため息まじりに足を止める。


「あ、足元がよく見えなくて……」

外灯があるわけじゃないし、陸地から離れていくほどに光が薄くなっていく感覚。すると津崎はおもむろに手を出した。


「ほら」

不器用に、大きな手のひらが私の瞳に映る。